ご挨拶
形成外科って、何を治療しているの?と思われている方が多いと思います。
よく聞かれますが、なかなかひと言では答えるのは難しい質問です。簡単に説明すると、身体に生じた組織のさまざまな異常や見た目の問題について診療を行っている外科系の専門領域です。
対象とする特定の臓器はありませんが、頭のてっぺんからつま先までの全身の体表面の問題を取り扱っています。
特徴
- 総合病院の形成外科として、他の診療科医師や多職種間と連携して診療を実施
- 地域医療包括ケア病床があり、治癒に時間のかかる慢性創傷等も入院で治療やリハビリが可能
診療内容
形成外科で取り扱う疾患
- けが、やけど、難治性潰瘍、床ずれ(褥瘡)
- 傷あと、拘縮(ひきつれ)、ケロイド
きずそのものの治療から、きずあとやそれに伴うひきつれの治療を行います。 - 皮フ腫瘍
- 陥入爪、巻き爪などの爪の疾患
- 顔の骨折
- 眼瞼下垂症
- 腋窩多汗症、腋臭症(わきが)
- 乳房再建
- リンパ浮腫
一見ただのホクロに見えますが、皮膚がんの場合があります
腋臭症(わきが)の治療では、保存的治療から手術治療まで対応します
乳房再建の手術
乳癌になっても乳房を失わない、生活の質に寄与する治療を。
形成外科では、乳腺外科と連携し、乳癌切除後の再建を行っています。乳癌は、女性の9人に1人が罹患しますが、「乳癌になっても乳房を失わない」という選択肢を持っていただくための診断・治療を行っています。
同時に、検診受診の抵抗を減らし早期発見・早期治療につなげたいという想いを持ちながら、がん患者さんの治療後のQOL(生活の質)向上に寄与できるような診療を考えております。
乳房再建手術を行うタイミング
乳癌の手術後の治療方針や患者さんの希望に合った方法・タイミングで再建します。
乳癌手術と同時に行う再建
同時再建は乳腺全摘術と同時に乳房形態を回復できるため理想的ですが、以下の場合には二期再建が望ましいでしょう。
局所再発のおそれがある場合
肉腫や局所進行乳がん、炎症性乳がんでは局所再発率が高いため、術後一定期間を経てからの二期再建が望ましいでしょう。
皮膚感染症のある例
インプラントは感染を生じやすいため、乳がんまたは他の原因によって術野に感染がある場合は二期再建とすべきです。
乳癌治療後に行う乳房再建(二期再建)
乳癌の手術後から時間がたっていても再建可能です。二期再建を受けるのは、術後6ヶ月以上を経てからが好ましいでしょう。その理由は、 以下の2つです。
- 手術による炎症などが完全に消退するのには約6ヶ月かかるため
- 術後化学療法を行う場合、約6ヶ月の期間を要しますが、化学療法中は出血しやすく感染を起こしやすいためです。
乳がんの手術と同時に再建を行う場合、乳房のふくらみが維持されるため喪失感が少ないと思います。
一方、がんの手術に集中したいという思いがある場合は、改めて再建を行うほうがよいかもしれません。
ご自身の気持ちと医師やスタッフたちとよく相談して、一緒に治療に取り組んでいきましょう。
乳房再建の方法
方法 | 自分の体の一部(自家組織)を使って再建する方法 | 人工物を使って再建する方法:シリコンインプラントによる乳房再建術 | |
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術式 | 深下腹壁動脈穿通枝皮弁法 | 広背筋皮弁法 | |
説明 | 腹部の皮膚・脂肪に血管付けて採取し、顕微鏡を使って胸部の血管と皮弁の血管をつなぎます。 これにより、腹部の皮膚・脂肪を血流がある状態で胸部に移植することができるため、それを用いて乳房を再建します。腹部の筋肉は温存します。 |
背中の皮膚・脂肪・広背筋を血管がつながったままの状態で、脇の下を通して胸部に移動し、乳房形態を再建する方法です。 | 乳がん手術では乳輪乳頭を含む乳房の皮膚が切除されることが多いため、まずは組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)で皮膚を伸展させる必要があります。そのため2回の手術が必要になります。 |
適している人 | ・人工物を使用したくない人 ・乳房の比較的大きい人 |
・人工物を使用したくない人 ・乳房があまり大きくない人 |
・乳房の下垂がない人 ・乳がん手術で大胸筋や乳房の皮膚がしっかり残っている人 ・身体への負担が少ない手術を希望する人 |
適さない人 | 妊娠を希望している人 | ・力仕事をしている人 ・腕を使うスポーツをしている人 |
・再建部位に放射線治療歴がある人 ・喫煙している人 ・術後治療の可能性が高い人 |
メリット | 腹部・背部の皮弁に共通のメリット
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デメリット | 腹部・背部の皮弁に共通のデメリット
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眼瞼下垂(がんけんかすい)
眼瞼下垂症とは
眼瞼下垂症とは、上まぶたが十分に上がらなくなっている状態です。眼瞼下垂症は、加齢や物理的刺激、外傷、神経の疾患が原因となる後天性眼瞼下垂症と、生まれつきの先天性眼瞼下垂症に分けられます。
眼瞼下垂症セルフチェック!こんな症状がありますか?
- まぶたが重い、目が開けにくい
- 目を開けるときに眉毛が吊り上がる、おでこに深いしわが寄る
- 以前より目が小さくなった
- 上まぶたの凹みが気になる
- 周りの方からいつも眠たそうだと言われる
- 慢性的な頭痛、肩こりがある
あてはまる症状のある方は眼瞼下垂症の可能性があります。
腱膜性(けんまくせい)眼瞼下垂症
後天性の眼瞼下垂症の中でも頻度の高いものが腱膜性眼瞼下垂症です。上まぶたの奥にある眼瞼挙筋というまぶたを上げるための筋肉があり、この筋肉がゆるんだり、瞼板から外れてしまって、まぶたが上がらなくなっている状態です。
加齢や物理的刺激(目をよくこする、コンタクトレンズの長期間の使用、白内障などの眼科手術)が原因で起こります。
先天性眼瞼下垂症
生まれつき眼瞼挙筋の働きが低下していることにより上まぶたが十分に上がらない状態です。軽症の場合は若い頃には診断されず、年齢を重ねるとともに症状がはっきりしてくる場合もあります。
治療方法は
手術により治療します。主には次の二つの手術(余剰皮膚切除術と挙筋前転術)を状況に応じて選択、組み合わせて行います。
余剰皮膚切除術
たるんで余っている皮膚を切除します。
眉毛の下や二重のラインなどきずあとが目立ちにくい部分から切除します。
挙筋前転術
緩んだり、外れてしまっている眼瞼挙筋を引き出して瞼板に固定しなおします。上まぶたが楽に上がるようになり、上まぶたの凹みも改善します。
この手術の効果が期待できないような眼瞼挙筋の機能が著しく低下している重度の腱膜性眼瞼下垂症や先天性眼瞼下垂症の方には、筋膜移植術(筋膜つり上げ術)という、太ももの筋膜を上まぶたに移植し、上まぶたを吊り上げる手術を行います。
手術は基本的に局所麻酔で行いますので、身体への負担は少ない手術です。
上まぶたは術後に腫れやすいため、数日~1週間程度の入院をお勧めしています。強い腫れは、個人差はありますが、1〜2週間でひいてきます。
術後は、「目が開けやすくなった」「視野が広がって明るくなった」「目元がぱっちりして若返って見える」「頭痛、肩こりが軽くなった」など、様々な改善を実感されるようです。まぶたが下がってお悩みの方は是非ご相談ください。
腋窩多汗症や腋臭症(わきが)のボトックス注射や手術
腋窩多汗症では、原発性(季節問わず、原因不明の過剰な腋窩の発汗が6ヶ月以上続いている)を対象として診療を行っています。
また、腋臭症(わきが)においても、手術はもちろん、手術以外の治療法も行っており、患者さんの症状や状況に応じて最適な方法をご相談しながら決めていきます。何かお困りの際にはぜひご相談ください。
フットケアの大切さ 自分の足を大切にしていますか?
足は快適な生活を送ることに欠かせません。足のトラブルは長引くことも多く、早めに対処することが大切です。末梢動脈疾患(PAD)や糖尿病を患っている方、透析をしている方、ご高齢の方は足にトラブルを抱えやすくなっていますので、ご自身やご家族さまと一緒に自分の足をチェックすることが大切です。
1日1回、足を見て確認するこれが、フットケアの第1歩です。
(チェックするときは)
- 1日1回、明るいところで足を見ます
- 体が硬くて、おなかが邪魔で…など見えにくい場合は鏡を使うなど工夫をしましょう
- ご家族さまも協力して、一緒に見ましょう
- 不安なことがあれば、病院でも足を見せましょう
チェック項目
- きずがないか
- 皮膚が固くなっているところはないか
- 腫れていないか
- 皮膚や爪が変色していないか
末梢動脈疾患(PAD)とは
末梢動脈とは、おもに四肢(両脚、両腕)動脈、腹部内臓動脈、頸動脈、腎動脈を指しており、その動脈の病気(疾患)を総称したものが、この末梢動脈疾患となります。その疾患は、動脈硬化を基礎とする閉塞性動脈硬化症と呼ばれる疾患が占めており、現在、この末梢動脈疾患という病名は、閉塞性動脈硬化症とほぼ同じ意味で用いられています。
PADの症状
- 冷たい
- しびれがある
- 色が悪い
- 休みながらでないと足が痛くて歩けない(間欠性跛行)
- 安静にしている時に、足に疼痛がある。
PADにかかりやすい人
- 喫煙している
- 血糖値が高い
- 血圧が高い
- 高脂血症である
- 肥満・運動不足
- 50歳以上
PADの検査
PADの検査では、足の動脈(そけい部、ひざ裏、足背)の脈を触れることで分かる場合もありますが、もっと専門的な件さが必要な場合には、下肢エコー検査や両腕・両足に特殊な血圧計を巻いて同時に血圧や脈波を測定する検査(ABI検査)を行ったり、下肢の血流の下がり具合の重症度を評価する皮膚組織灌流圧測定(SPP検査)やCT、MRIを用いた検査で総合的に評価を行います。
治療
PADには大きく分けて、薬物療法、理学療法、血管内治療を含めた手術という4つの治療法があり、まず動脈硬化の原因となりやすい高血圧や糖尿病、高脂血症などがある場合は、その治療を徹底します。
それとともに病気の進行度や身体の状態にあわせて、抗血小板薬や血管拡張剤などの薬を使った治療のほか、人工血管や自分の静脈を用いてバイパスを作る手術や狭くなっている血管を広げる治療などが行われます。
①薬物療法
まず、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、禁煙に努めることで、喫煙、高血圧、高脂血症、糖尿病、ストレス、肥満などの動脈硬化の危険因子をコントロールしていきます。
それで改善されない場合は、抗血小板薬、血管拡張薬、抗凝固薬などを使った薬物治療を行います。
②理学療法(運動療法)
医師の指示・処方で、早く歩いたり軽いジョギングなどの筋肉運動をすることにより、血流を迂回させる別の道(側副血行路)を発達させることで、足への血流増加をさせる治療法です。
③バイパス手術(外科的手術療法)
狭くなったり詰まったりした動脈の先に血液が流れるように、人工血管や患者さん自身の血管を用いて、詰まった場所を迂回する別の道(バイパス)を作る治療法です。
患者さんの身体の状態によっては、血管内治療(バルーン、ステント留置術)という、血管造影の手技を用いてカテーテルと呼ばれる細い管を用いた治療を実施します。狭くなったり、詰まった血管の部分に風船(バルーン)のついたカテーテルを入れて、風船を血管の中からふくらませて血管を拡げます。バルーンだけで十分な効果が得られない場合、同時にステントという金属の筒を血管に入れることがあります。
治療は約1~2時間で終了し、治療当日はベッド上での安静が必要ですが、翌日からは歩行できます。入院期間も数日と短いため、切って開く外科的手術に比べて、身体の負担が非常に少ないと言えますが、適用できる範囲に制限があります。
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形成外科医森川 綾 もりかわ あや
専門分野 形成外科 資格・認定・学会 日本形成外科学会専門医 出身大学 佐賀大学 一言コメント 形成外科はまだなかなか馴染みの少ない診療科だと思います。
きず・やけど、きずあと、皮膚腫瘍、眼瞼下垂など体の表面に起こる様々な疾患を取り扱います。
また、他の診療科の先生方と連携し、乳房再建やリンパ浮腫診療も行って行きます。患者さんに分かりやすい説明を心がけていきますので、何科に受診したらいいのか分からないというお困りごとから、何でもお気軽にご相談下さい。
午前 | 午後 | |
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月 | (手術日) | 森川 |
火 | 森川 | - |
水 | - | - |
木 | 森川 | - |
金 | (手術日) | 森川 (予約のみ) |
土 | 森川 | - |