泌尿器科

ご挨拶

泌尿器科は、高齢者の病気が多く平均寿命の延長に伴って診療の必要性が高くなってきております。対象疾患も頻尿症、尿失禁、尿勢低下などの前立腺肥大症のような症候疾患、膀胱炎・腎盂腎炎などの尿路感染症、前立腺癌・膀胱癌などの悪性腫瘍など多肢にわたります。
それらの疾患には一般的に泌尿器科はチームで対応していますが疾患を絞って診察する事で当院近郊にお住いの方々への地域医療に貢献できると考えております。
また、前立腺癌・膀胱癌・腎癌と言った根治治療が必要な場合は、ロボット手術のできる高次の病院への紹介が可能です。
治療が終了しても再発検査や長期の経過観察は、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)内視鏡検査が充実しており当院で対応が可能です。泌尿器科疾患の窓口になれるよう診療を行ってまいります。お気軽にご相談・ご受診をお待ちしております。

診療内容

  • 泌尿器科領域全般
  • 尿路・性器悪性腫瘍の診断治療(経尿道的手術)
  • 腎不全の治療
  • 男性不妊症の相談、EDの診断
  • 血尿、尿潜血、膀胱炎、過活動膀胱、尿失禁
  • 精巣上体炎、亀頭包皮炎、陰嚢水腫
  • 前立腺肥大症、前立腺炎、前立腺癌の精密検査(PSA・採血・前立腺エコー・MRI等)
  • 包茎の相談(手術)
  • 性病

前立腺肥大

概要

前立腺肥大症とは、前立腺が齢を重ねるにつれてだんだんと大きくなり、尿道を圧迫して尿が出にくくなる病気を前立腺肥大症と言います。通常の前立腺の大きさはクルミ大くらいで、これが肥大してくると鶏卵大以上になり、症状が進むと尿が全くでなくなる事もあります。

検査について

PSA検査

採血のみの検査で、血液中にある前立腺に特異的なタンパク質の一種「PSA」の値を測定します。スクリーニング検査のなかで、もっとも精度が高く、簡単に受けることができます。PSAの値が高くなるにつれ、前立腺がんである確率も高くなっていきますが、年齢により基準値が設けられています。
PSAの値は、前立腺肥大症や前立腺炎でも高値になることがあるため、基準値以上の値が出ると、専門医を受診し、前立腺がんであるかを確定するための、より詳しい検査を受けることになります。

治療について

  1. 薬物治療

    前立腺肥大が尿の通過障害を引き起こす理由は2つあり、ひとつは、交感神経影響で前立腺の平滑筋が収縮して、尿道を圧迫することによります。もうひとつは、前立腺の収縮とは関係なく、大きくなった前立腺が物理的に尿道を圧迫して、通りを悪くすることによります。
    どちらの理由かによって、大きく分けて2種類の薬剤が広く用いられます。ひとつは、前立腺平滑筋を緩めて尿道圧迫を解除し、尿を通りやすくする薬剤です。もうひとつは、前立腺を小さくして、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を軽減する薬剤です。前立腺の肥大には男性ホルモンが関与していますが、この男性ホルモンの前立腺に対する作用を抑えることにより、前立腺は縮小します。

  2. 手術治療

    薬物治療を行っても、症状の十分な改善が得られない場合や、前述したような肉眼的血尿、尿路感染、尿閉を繰り返す場合、あるいは膀胱に結石ができたり、腎機能障害が発生した場合には手術による治療が行われます。

    • 経尿道的前立腺吊り上げ術
      (PUL:Prostatic urethral lift)

      尿道から内視鏡を挿入し、肥大した前立腺組織の中に糸状のインプラントを埋め込み、尿道を塞がないように開通させ、排尿できるようにする治療法です。

    • 経尿道的前立腺切除術
      (TUR-P: Transurethral Resection of Prostate)

      尿道から内視鏡を挿入し、内視鏡の先端に装着した切除ループに電流を流し、肥大した前立腺を尿道側から切除する手術です。前立腺切除は、肥大した前立腺(内腺)を完全にくり抜くように切除します。前立腺肥大症に対する最も標準的で、広く行われている方法です。

  3. 保存治療

    保存治療には、生活指導、経過観察などがあります。生活指導では、水分を摂りすぎない、コーヒーやアルコールを飲みすぎない、刺激性食物の制限、便通の調節、適度な運動、長時間の座位や下半身の冷えを避けるなどの注意事項を守ってもらい、前立腺肥大症の症状緩和を狙います。症状や合併症のない前立腺肥大症は治療の必要はなく、定期的な経過観察を行います。

前立腺がん

概要

男性の部位別がん罹患率1位、60歳以上の男性に多いです。
前立腺がんは、男性にだけ存在する前立腺から発生するがんです。前立腺がんは、高齢者のがんといわれており、約90%が60歳以上の方となっています。
近年では、罹患率の上昇傾向が続いており、2018年における男性の「部位別がん罹患数」で第1位となっています。前立腺がんと診断された症例数も約9万2千例で、2020年の死亡数は約1万2千人と増加傾向にあります。(出典:国立がん研究センターがん対策情報センター)

前立腺がんは、早期には自覚症状がほとんどありません。がんが大きくなって尿道が圧迫されるようになってくると「尿がでにくい」「尿の回数が多くなる」「尿が出きらない感じがする」など、主に排尿に関連した「前立腺肥大症と同じ様な」症状が出現します。
がんが尿道や膀胱に広がると、排尿に関連した症状に加え、「血尿」「頻尿の増悪」「尿失禁」「水腎症(癌が尿管を押しつぶしてしまうと尿がうまく流れなくなって腎臓が腫れる)」など、排尿以外の種々の症状が出現します。
がんが骨に転移を起こすとその部位に痛みを生じることがあり、背部痛や腰痛として感じられたり、手が痺れたりすることもあります。転移をした部分の骨が脆くなると骨折をしやすくなります。
がんが骨に転移を起こすと、背部痛や腰痛を感じたり、手が痺れたりすることもあります。

検査について

主な検査はPSA検査、直腸診です。これらの検査で前立腺がんが疑われる場合には、経直腸エコー(超音波検査)、前立腺生検などを行います。がんの広がりや転移の有無は画像検査で調べます。

  • 直腸診・経直腸エコー

    直腸診は、医師が肛門から指を挿入して前立腺の状態を確認する検査で、前立腺の表面に凹凸があったり、左右非対称であったりした場合には前立腺がんを疑います。
    経直腸エコーは、超音波を発する器具(プローブ)を肛門から挿入して、前立腺の大きさや形を調べる検査です。

  • 前立腺生検

    前立腺生検では、超音波による画像で前立腺の状態をみながら、細い針で前立腺を刺して組織を採取し、それが悪性であるかどうかを検査します。前立腺生検でがんが発見されなかった場合にも、PSA検査を継続し、PSA値が上昇する場合には再生検が必要になることがあります。

  • 画像検査

    画像検査では、がんの広がりや転移を調べ、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ検査などを必要に応じて行います。CT検査では、リンパ節転移の有無や肺転移の有無を確認するために実施します。MRI検査では、がんが前立腺内のどこにあるのか、前立腺の外へ浸潤がないか、リンパ節へ転移がないかなどを調べます。骨シンチグラフィ検査では、骨転移があるかどうかを調べます。

治療について

治療は、進行状況や体の状態、年齢、ご希望なども含め標準治療に基づいて検討・決定します。
治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含め検討していきます。治療には図のような種類があり、監視療法、組織内照射療法は、低リスク群で選択が可能、手術や放射線治療は低・中間・高リスク群のいずれでも選択可能です。
高リスク群に対して放射線治療を実施する場合には長期間の内分泌療法を併用することが推奨されています。
前立腺がんの治療は、生殖能力に影響することがありますので、将来お子様を授かりたいなどを希望している場合には、お気軽にご相談ください。

頻尿症(過活動膀胱)

概要

「尿が近い、尿の回数が多い」という症状を頻尿といいます。一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいます。しかし、1日の排尿回数は人によって様々ですので、一概に1日に何回以上の排尿回数が異常とはいえず、8回以下の排尿回数でも自分自身で排尿回数が多いと感じる場合には頻尿といえます。
頻尿の原因は様々ですが、過活動膀胱、残尿(排尿後にも膀胱の中に尿が残ること)、多尿(尿量が多いこと)、尿路感染・炎症、腫瘍、心因性に分けることができます。

過活動膀胱とは

膀胱に尿が十分に溜まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮するという病気で、急に尿がしたくなって我慢ができず(尿意切迫感)、トイレに何回も行くようになります。過活動膀胱は日本で1000万人以上の男女が罹患する頻度の多い病気です。
脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気のために、膀胱のコントロールが効かなくなる、前立腺肥大症による排尿障害のために膀胱が過敏になる、などの原因で発生しますが、加齢による老化現象として起こったり、原因が不明(明らかな基礎疾患がない)であったりすることも少なくありません。また、尿が間に合わずにもれてしまうこともあります(切迫性尿失禁)。1回の排尿量は少なく、何回もトイレに行くようになります。

多尿・残尿量の増加

多尿は、1日の尿量が著しく増えた状態で、膀胱や尿道に問題がなくても、糖尿病などの内分泌疾患、水分の多量摂取、薬剤(利尿剤)による尿量の増加が頻尿の原因となります。1回の排尿量は正常(150~200ml以上)ですが、何回もトイレに行くことになります。
残尿が増加する場合とは、排尿後も膀胱内に尿が残る状態で、前立腺肥大症などによる排尿障害が進行すると残尿が発生します。また、糖尿病、腰部椎間板ヘルニア、子宮がん・直腸がんの手術などの影響で、膀胱がうまく収縮できなくなって排尿障害を引き起こし残尿が発生することがあります。
膀胱内に残尿があると、結果的に尿を溜められる膀胱のスペースが減少するために、1回の排尿量は少なく、何回もトイレに行くようになります。

尿路感染・炎症

膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染が起こると、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になります。間質性膀胱炎は原因不明で、膀胱に慢性の炎症を起こし、長期間続く頻尿、膀胱充満時の下腹痛が特徴的な病気です。

腫瘍

膀胱がんの重要な症状は血尿ですが、まれに膀胱がんによる膀胱刺激症状として頻尿がみられることがあります。

膀胱がんはこちら

心因性

心因性の頻尿は、膀胱・尿道の病気もなく、また尿量も問題ないにも関わらず、トイレのことが気になって何回もトイレに行ってしまう状態のことをいいます。心因性なので、夜寝てしまえば排尿のことを気にすることはないので、通常夜間の頻尿はないことが多く、また朝の起床時も排尿量は正常です。

膀胱がん

概要

膀胱がんは、膀胱の内側にある、尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生した悪性腫瘍のことをいいます。年間、人口10万人あたり約15人が膀胱がんと診断され、50歳以上の男性に多く発生すると言われています。
自覚症状としては、目で見える血尿でみつかることが最も多いため、血尿があった際はすぐにご相談ください。
膀胱がんの原因は未だにはっきりとはわかっておらず、喫煙者の方に膀胱がんが発生しやすいこと、喫煙者は非喫煙者に比較して2~4倍、膀胱癌の発症リスクを高めることは分かっています。
また、特殊な染料(ナフチルアミン、ベンチジンなど)を取り扱う職業の方も曝露によってリスクが高まると言われています。

検査について

膀胱がんを調べるためには、通常、下記の検査が行われます。

  • 尿検査(尿定性、尿沈渣)

    血尿や感染症の有無を調べます。

  • 尿細胞診

    顕微鏡で尿の中にがん細胞がいないか調べます。結果は1~5段階に分かれており、1・2の場合陰性(明らかながん細胞無し)、4・5が陽性(がん細胞が存在する可能性が高い)、3が偽陽性(良悪性判定困難)となります。
    尿細胞診ですべての膀胱がんの診断がつくわけではありませんが、悪性度の高い(つまり進行が早い悪いがん)腫瘍の診断にはとても有用です(陽性率70%、特に上皮内癌の場合80〜90%の陽性率)。
    一方、悪性度の低いがんの場合、陽性率は20%程度で高くありません。尿細胞診で陽性になった場合、膀胱を含めた尿路のどこかに、がんが存在している可能性が高いと判断します。

  • 腹部超音波検査(腹部エコー)

    X線を使わず痛みを伴わないので健康診断や外来での初期検査でよく行われます。膀胱内に突出するような腫瘍であれば超音波検査で診断できますが、時に膀胱結石や血塊などとの鑑別が困難なことがあります。また膀胱の表面を這うように広がる上皮内癌は診断が困難です。尿管に腫瘍がある場合に尿の通り道が閉塞し腎臓が腫れる水腎症も診断できます。

  • CT検査

    水腎症の有無や腎盂・尿管腫瘍の合併の有無を調べることができます。また膀胱がんのリンパ節・肺・肝臓などへの転移の有無も調べることができます。腫瘍の浸達度の診断にはMRIの方が優れています。また、造影剤を使用して尿の通り道をより詳細に調べることもあります。

  • MRI検査

    膀胱がんの深達度(病巣の深さ)を調べる目的で行われます。深達度診断では現在もっとも優れている検査です。X線を使用しないため身体への負担はありません。

  • 膀胱鏡検査(内視鏡検査)

    膀胱腫瘍の存在を確認するための、最も確実で大切な検査です。たいていは局所麻酔のゼリーを尿道から注入し行われますが、やわらかい内視鏡(軟性鏡)を用いていますのでさほど苦痛もなく受けることができます。ただし、検査後に時に血尿や排尿痛、発熱などが起こることがあります。

  • 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

    がんの進行の程度を調べる検査で、かつ手術方法の1つでもあります。検査や治療の1つとして、複数回行うこともあります。全身麻酔あるいは腰椎麻酔をして、尿道から内視鏡を挿入してがんを電気メスで切除します。切除した組織を顕微鏡で調べることにより、がんの深達度やがんの性質などについて、正確な病理診断を行うことができるため、ほぼすべての膀胱がんで行います。
    筋層非浸潤性膀胱がんの場合、TURBTでがんを切除できることもあります。初回のTURBTで再発、または筋層浸潤や所属リンパ節への転移などの進展のリスクが高いと判断された場合や、筋層まで切除できず、筋層にがんがあるかどうか判断できなかった場合には、もう一度TURBTを行うことがあります。

治療について

治療方法は、がんがどれくらい進行しているかと悪性度で判断します。早期がんでは、予後は良好で膀胱機能の温存も可能です。

  • 筋層非浸潤性膀胱がん(0期・Ⅰ期)の治療

    TURBTによって筋層非浸潤性膀胱がんと診断された場合は、膀胱の中に細胞障害性抗がん薬やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を注入する膀胱内注入療法を行います。薬の種類や回数、期間はリスクなどを検討し判断します。
    細胞障害性抗がん薬注入療法は、低リスクまたは中リスクの筋層非浸潤性膀胱がんに対して行われる治療法です。BCG注入療法は、がん細胞を攻撃する免疫の力を強めるBCGという薬を膀胱内に注入します。中リスクの一部、高リスク、超高リスクの一部の筋層非浸潤性膀胱がんに対して行われることのある治療法です。上皮内がん以外の高リスクの筋層非浸潤性膀胱がんでは、2回目のTURBTを行うこともあります。
    また、BCGなどの膀胱内注入療法に効果がみられなかった場合には、膀胱全摘除術を行うこともあります。

  • 筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ期・Ⅲ期・Ⅳ期)の治療

    転移がない筋層浸潤性膀胱がんの標準治療は、膀胱全摘除術となります。膀胱を摘出した場合、尿を体外に排出する経路をつくる尿路変更術が行われます。高齢であったり合併症をもっていたりする場合には、TURBT、薬物療法、放射線治療などを組み合わせる膀胱温存療法を行うこともあります。転移があるなどがんが進行している場合には、薬物療法などを検討します。

尿潜血について

健診や病院での尿検査で、「おしっこに血が混じってます」とか「尿潜血陽性です」とかいわれることがあると思います。尿に血が混じる、いわゆる尿潜血は尿を作る腎臓や尿の通り道の重要な病気のサインです。
血尿が発見される頻度は年齢とともに増え、男性に比較して女性に多く見られます。おしっこが赤いなど、尿に血が混じることを目でみて判断できる肉眼的血尿はさらに重要な病気のサインです。
たとえば膀胱癌の85%は肉眼的血尿を契機として発見されます。また腎癌でも、最近は検診や人間ドックなどで偶然に発見される症例が増えてきたものの、尿潜血を契機に見つかることも少なくはありません。
一方、目でみて尿の色の変化はわからないものの、尿検査にて血が混じっている状態を顕微鏡的血尿といいます。
顕微鏡的血尿でも、がんなどの重要な病気の危険信号の場合がありますので注意が必要です。

尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎・前立腺炎・精巣上体炎)

尿路に細菌が住み着き、増殖して炎症をおこしたものを尿路感染症といい、感染症の場所によって膀胱炎と腎盂腎炎に分類されます。
細菌は尿道の出口から侵入し、膀胱に達し膀胱炎をおこします。膀胱の細菌が尿管を上に登って腎盂に達しで増殖すると腎盂腎炎をおこします。

膀胱炎

概要

膀胱の中で細菌が繁殖し、膀胱の粘膜に炎症を起こす病気が「膀胱炎」です。圧倒的に女性に多い病気です。女性の方が尿道が短く、細菌が膀胱まで簡単に到達してしまいます。多くの場合、おしっことともに細菌は膀胱の外へ洗い出されますが、おしっこを我慢したり、体調が悪かったりすると膀胱の中で細菌が繁殖して膀胱炎を起こします。

治療について

膀胱炎の治療には、抗菌薬を用います。通常3~4日の服用で症状はよくなることが多いです。治療中の方は、尿量が少なく、膀胱にたまっている時間が長いと膀胱内で菌が繁殖しやすくなるので、水分を多めに摂取して尿量を増やすように心がけてください。こまめに排尿することも大切です。

腎盂腎炎

概要

腎盂や腎杯、さらに腎臓の髄質が細菌によって炎症を起こしている状態で、膀胱から細菌が逆流することによって引き起こされる、腎盂および腎臓の感染症のことをいいます。
適切なタイミングで、適切な治療(抗生剤の投与、補液)を行わなければ、細菌が血液中に侵入し、いわゆる敗血症と呼ばれる生命をも脅かす状態になります。

検査について

尿検査・血液検査・超音波(エコー)検査を行います。まずは尿検査を行い、尿中の白血球や細菌を確認し、白血球が一定数以上あり、さらに発熱や腰背部痛など腎盂腎炎に特徴的な症状がある場合、急性腎盂腎炎と診断されます。
一方、発熱や腰背部痛などがなくても、過去に膀胱炎や急性腎盂腎炎などにかかったことがあれば慢性腎盂腎炎が疑われます。また、尿検査と並行して病原菌の種類を特定するために尿の細菌培養検査も行います。これは、抗生剤の感受性を調べるためにも必要な検査です。

治療について

治療は、細菌感染が原因であるため、抗菌薬による薬物療法が中心となります。比較的全身状態がよい軽症の場合は、比較的すみやかに改善します。治療の期間は通常1〜2週間ですが、治療を終了したあと再発の有無を確認するために約1〜2週間おいて尿検査を行います。治療中は安静と十分な水分補給が必要です。症状が改善しない場合は入院を考慮します。
発熱の程度が強い、水分や食事が十分に摂取できない、血圧が下がる、全身状態が悪いなど重症の場合には、入院のうえ抗菌薬の点滴治療を行います。発熱がおさまれば、経口治療に変更することがあります。

前立腺炎

概要

前立腺という男性の尿道のまわりにある組織が何らかの原因で炎症を起こす病気です。前立腺炎は、急性のものか慢性のものか、細菌感染によるものか感染以外によるものかで分類されます。
尿道を取り囲む組織に炎症が及ぶため、炎症による激しい痛みだけでなく、尿に関わるさまざまな症状が生じることがあります。

検査について

問診で会陰部の痛みや尿路の刺激症状を確認し、前立腺の診察と尿検査を行います。前立腺炎の診断は通常、症状、身体所見、尿検査と尿培養検査の結果に基づいて行います。

治療について

細菌性の場合、原因菌に効く抗生物質を投与しながら全身状態を改善させます。
非細菌性の場合、薬物療法や生活習慣改善などのアプローチを行います。そのほか、症状を和らげるための鎮痛薬や尿を出しやすくするための薬を用いることもあります。

精巣上体炎

概要

睾丸の後ろの方にある精巣上体が主にクラミジアなど非淋菌性の細菌によって引き起こされる炎症症状です。精巣上体に炎症が起きると陰嚢の脹れ、痛み、発熱をきたします。放置すると陰のうに膿がたまり、さらに悪化すると皮膚が破れて膿が出てくることもあります。
何の細菌かをはっきりさせること(菌の同定)が困難で菌種も不明なことがあります。

検査について

診察を行ったうえで、性感染症の疑いがある場合にはクラミジア検査や淋菌の検査を行ないます。さらに検尿で尿路感染の有無も調べ、高齢者の場合には、前立腺肥大症などの病気により排尿障害をきたしていないかも調べます。

治療について

抗菌薬で治るため、原則は抗菌薬を投与します。軽症であれば内服治療、重症の場合は入院して点滴で抗菌薬を投与します。きちんと治療をしないと慢性化して膿がたまり、切開や精巣上体の摘出が必要になることもあります。陰のうを冷やして安静を保つことも重要です。

  • 泌尿器科医一倉 晴彦 いちくら はるひこ

    専門分野 泌尿器科
    資格・認定・学会 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医 日本泌尿器科学会泌尿器科指導医 医学博士(2008年 九州大学) 日本生殖医学会
    出身大学 鳥取大学医学部
    一言コメント

    泌尿器科医として31年目になります。これまで原三信病院で長く泌尿器科全般の治療に携わってきました。特に前立腺癌を専門にしていましたが泌尿器科特有の血尿、頻尿、排尿困難にも対応し何よりも身近な泌尿器科を目指して診療してまいります。

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